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ペットボトル症候群とは?

ペットボトル症候群とは?

ペットボトル症候群は、水分補給のために糖質を含む清涼飲料水を大量に飲み続けることで発症します。肥満体型の若い人が多いですが、高齢者では血糖値が下がりにくくなっているため、糖分が多い飲み物をよく摂取している人は注意が必要です。ここでは、ペットボトル症候群の原因や治療法、身体にいい飲み物の選び方などについて解説します。

ペットボトル症候群とは?

ペットボトル症候群とは、糖尿病であることに気づかずに糖分を含む清涼飲料水を多飲することで血糖値が上昇し、さらに喉が渇いてしまう悪循環に陥る病態のことです。

清涼飲料水には500mlあたり30~50gもの糖分が大量に含まれているものもあり、糖分を一気に摂取することにより糖尿病の急激な発症、悪化をきたします。血糖値が高くなると、濃くなった血液を薄めるために身体は水分を必要とし、尿として排出されますが、その結果身体は脱水状態となり、さらに水分を欲するためより喉が渇くようになるのです。インスリンは身体を動かすエネルギーを作るために血液中の糖分を細胞に運ぶことで血糖値を下げるホルモンですが、高血糖の状態が続くと、膵臓からインスリンが分泌されにくくなったり、分泌されたインスリンに対して血糖値が下がりにくくなる状態になります。

インスリンの分泌が低下したり、インスリンの作用が不足してしまうと、細胞に糖分を届けられずエネルギーを作り出すことができなくなってしまうため、代わりに肝臓で脂肪を分解してエネルギーを作ります。脂肪を分解する過程でケトン体という物質が産生されます。通常ケトン体は腎臓で再吸収されますが、ケトン体が増えすぎて蓄積してしまうと血液は酸性に傾きます(アシドーシス)。

また、血糖値が高い状態であるにも関わらず、糖をエネルギーとして使うことができないため、身体は糖が不足している、と誤解して血糖値を上げる作用のあるホルモンを分泌させてしまいます。これにより、血糖値はさらに上昇し、より多飲多尿などの高血糖症状が進行したり、吐き気や嘔吐などの消化器症状がみられることがあります。最悪の場合には昏睡状態に陥ることもあります。

ペットボトル症候群は、清涼飲料水の摂取が多い20~30年代の若年者に多く、水分の摂取量が増える夏場に多くみられる傾向があります。インスリンの分泌がほとんど無くなる1型糖尿病に多いと言われていますが、すべての糖尿病患者で発生する可能性があります。高齢者の場合であっても、加齢により血糖値が下がりにくく気がつかないうちに糖尿病または糖尿病予備軍となっている可能性があり、水分補給のために清涼飲料水を多飲していると血糖値が急激に上昇し、ペットボトル症候群を発症してしまうことがあります。

ペットボトル症候群の症状とは?

ペットボトル症候群では高血糖の症状に加え、アシドーシスによる症状を呈します。

高血糖症状として、
・著しい喉の渇き
・頻尿、多尿
・吐き気、嘔吐
・身体のだるさや脱力感
などがみられることがあります。

また、ケトン体の1種であるアセトンが原因で吐く息が果物のような臭いがすることがあります。さらにケトン体が蓄積され、身体のpHが酸性になると高度の脱水状態となり、
・血圧低下
・頻脈
・意識障害
・昏睡
などの症状がみられることがあります。

ペットボトル症候群の治療法は?

ペットボトル症候群は高血糖と高度の脱水状態に陥る病態であり、放っておくと昏睡状態となることもあるため、速やかに医療機関を受診し治療を受ける必要があります。脱水状態に対しては点滴治療が行われ、失った水分を補充します。高血糖に対してはインスリンの点滴が行われます。脱水状態ではインスリンの吸収が不安定になるため、静脈内への持続投与が必要となります。十分量のインスリンが投与されると、ケトン体は数時間以内に消失し、アシドーシスも改善します。

ペットボトル症候群の予防:飲み物

市販の清涼飲料水には糖分が多く含まれていますが、温度が冷たかったり、炭酸が含まれていると舌は甘さを感じにくくなります。また、甘味は苦みや酸味と合わさると味が弱く感じる味の抑制効果が起こりやすいといった特徴があります。したがって、甘さが控えめと感じる炭酸飲料やコーヒー飲料にも多量の糖分が含まれているのです。

効率的に水分補給ができると謳われるスポーツドリンクにも、500mlのペットボトルあたり約31gもの砂糖が含まれています。世界保健機関(WHO)は、砂糖の摂取上限を1日に摂取するカロリーの5%未満(平均的な成人では25g程度)とするべきだ、という指針を発表していますが、ジュース1本で容易に1日の摂取上限を超えてしまう可能性があります。そのため、血糖値の急激な上昇を抑えるには水やお茶などの糖分が含まれていない飲み物を選びましょう。嗜好品として清涼飲料水を飲む時は、それだけで水分補給はせずに、適量を守るようにしましょう。

飲み物に含まれる糖分(500mlあたり)

種類 砂糖の量
コーラ 56.5g
サイダー 52.5g
コーヒー飲料 44.8g
100%オレンジジュース 55g
エナジードリンク 53.5g
乳酸菌飲料 56g
野菜ジュース 40.5g

血糖値が高いままだとどうなるの?

糖尿病と気づかずに糖分が多い清涼飲料水を飲み続けたり、糖尿病と知っていても適切な治療を行っていなかったりすると、血糖値が高い状態が続いて身体中の血管が傷つけられてしまうため、様々な合併症の原因となります。また、日本人の死因の中でも多い心臓病や脳卒中の原因となる動脈硬化を発症しやすくなります。糖尿病は自覚症状が無い状態であっても、見えないところで合併症が進行していくため、気づいた時には日常生活に支障があらわれてしまう恐ろしい病気なのです。

糖尿病の3大合併症

・糖尿病腎症
腎臓にある糸球体には毛細血管が密集しており、高血糖状態が続くことで毛細血管が硬くなります。毛細血管が硬くなると、糸球体で血液をろ過して原尿を作ることができずに腎臓の機能が低下していきます。最終的には老廃物を尿として排泄できなくなるため、人工透析か腎移植が必要となります。初期ではほとんど症状がありませんが、進行すると通常ではろ過されるタンパク質が尿に排出されるようになり、タンパク尿が高度になると全身にむくみを生じます。さらに腎症が進行すると老廃物が排出できず身体に溜まることにより尿毒症の症状がみられます。

・糖尿病神経障害
高血糖状態が続くことで神経に栄養を供給するための血管が傷つけられてしまうことで神経の働きが障害されます。神経には皮膚の感覚などに関わる感覚神経、身体の運動に関わる運動神経、食べ物の消化や汗の分泌、膀胱や生殖器の働きや血圧の調節に関わる自律神経などがあり、様々な働きをしているため障害される部位によってみられる症状は異なります。感覚神経が障害されて皮膚の感覚異常が生じると火傷やケガをしても痛みを感じず気づかなかったり、足先や指先などにしびれや痛みなどが起こります。運動神経が障害されると、筋肉の萎縮や足の変形、筋力の低下などが起こります。自律神経が障害されると、立ち上がった時に血圧が下がる便秘や下痢、消化不良を起こしやすくなったり、汗をかきにくくなったり、膀胱の機能障害が起こったり、起立性低血圧が起こりやすくなったりします。

・糖尿病網膜症
目の中にある網膜は、レンズの役割を果たす水晶体を通して入ってきた光の情報を電気信号に変えて、脳へ送る働きをします。網膜には毛細血管が張り巡らされており、高血糖状態が続くと毛細血管が詰まり網膜への酸素や栄養が行き届かなくなります。初期には自覚症状がみられませんが、進行すると視力が低下したり、網膜剥離や眼底出血、硝子体出血などを起こすことがあり、最終的には失明に至る場合もあります。高血糖のまま治療しないでいると、5年で10%、10年で30%、15年で50%、20年で70%が網膜症を発症すると言われています。

ペットボトル症候群のまとめ

ペットボトル症候群は若い人が発症しやすい病気と言われています。しかし、糖尿病は初期は無症状で進行するため自分では気づきにくく、高齢者の中にも”隠れ糖尿病“の人は多くいらっしゃいます。糖分を含む清涼飲料水を普段から飲む習慣がある人は、お茶や水など糖分を含まない飲料を選ぶようにしましょう。

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参考:MSDマニュアル プロフェッショナル版 糖尿病性ケトアシドーシス

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