高齢者の適切な食事 要介護で病院に通院中は【自炊か宅配弁当か】
作成日:2022年10月5日

介護が必要な高齢のご家族が通院する日は、車の手配や通院の付き添いなどに時間がかかり、食事の支度にまで手が回らないことがありますね。
そんな時にも、体調に合わせた料理を手作りするべきか、宅配弁当を注文する方がよいのか、迷う方もいらっしゃると思います。
今回は、自炊と宅配弁当の上手な使い分けなどについてご紹介します。


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目次
食事の介護が必要な場合とは?
ご家族が高齢になると、持病や歩くことへの不安のほか、食事に対してもさまざまな悩みが出てくることと思います。
ではまず、どのような場合に食事介護が必要になるのかをご紹介します。
咀嚼・嚥下に不安が出てきた場合
食事に介護が必要になるケースの一つに、咀嚼や嚥下に不安が出てきたときです。
年齢を重ねると、手足の運動能力だけでなく、咀嚼・嚥下にかかわる筋肉も徐々に衰えていきます。
また、唾液分泌量の低下や脳出血、脳梗塞などをはじめとする疾患、事故による後遺症と、さまざまな理由で咀嚼や嚥下が困難になることがあります。
咀嚼が難しくなると、大きなものや固いもの、もそもそとしたイモ類は上手に噛むことができなくなります。
そのため、いつまでも飲み込むことができずに口に残ってしまったり、飲み込む時にのどに詰まってしまったりする場合があります。
さらに、嚥下に不安がある場合は、食べたものがうまく食道に落ちずに気管に入って誤嚥性肺炎を起こすことも考えられます。
このように嚥下が難しくなってきた高齢者には食事の際に支援が必要となるのです。
持病により食事制限がある場合
次に、持病により、食べるものを制限されるケースです。
糖尿病や高血圧などを患っていると、食事制限が必要になることがあります。
本来、大切な栄養素であるはずのものたんぱく質、カリウム、また、塩分やカロリーなどが、病状を悪化させてしまう要因になるのです。
食事制限がある場合は、咀嚼や嚥下に不安がある時よりも、より注意深く食材を選ぶ必要があります。
多くの場合はかかりつけの病院で食事指導を受けられると思いますが、国立循環器病研究センター病院のサイトでも、食事療法について紹介されています。
ご参照ください。
高齢者が自炊する際のポイント
では、咀嚼や嚥下への不安や持病による食事制限がある場合、どのような点に注意が必要なのかを見ていきましょう。
素材を細かく刻む
咀嚼が難しくなると、大きな食材、固い料理は噛むことが難しくなります。
また、大きく切ったものは繊維が長いままになるため、食材によっては長時間煮込んでも固いまま残ってしまいます。
素材を細かく刻むことで一口の量を調節することもできるようになります。
ただし、ある程度咀嚼ができる方の食事であるにもかかわらず、すべてを細かく切ってしまうと、噛まずに飲み込んでしまうことがあります。
咀嚼の状況に応じて切るサイズを調整しましょう。
たれや出汁にとろみをつける
サラサラとした汁物や煮物などの出汁は、飲み込む際に誤って気管に入り、激しくむせることがあります。
また、料理にしっかりと絡まることで食材がまとまりやすく、ポロポロとこぼれることが少なくなるほか、ホクホクとした食材も水分を含むたれがしっかりと絡まっていることで、咀嚼しやすくなります。
煮込み料理をメインにする
胃腸が弱くなった高齢者にとって、揚げ物や炒め物は固くて食べにくいものが多いだけでなく、油脂の使用量が増えるため、消化に負担がかかりがちになります。
状況に応じたサイズに切った食材を軟らかく煮た料理をメインにするとよいでしょう。
煮汁にしっかりと出汁を効かせておくと塩や醤油などの使用量を抑えることができ、その結果、塩分を減らすことができます。
高齢者に宅配弁当がおすすめ
このように、食事の介護が必要な高齢のご家族向けに一日3度の食事を家族の食事とは別に一人分だけ作るとなると、どうしても手間が増えてしまいます。
時には通院や仕事、家事などで調理に時間がかけられない日もありますね。そんな時におすすめなのが、高齢者向けの宅配弁当です。
では、高齢者向けの宅配弁当にはどのような特徴があるのかをご紹介します。
食べやすさに配慮している
先ほども触れた通り、高齢になると咀嚼や嚥下に不安が出てくる方が多く、固いもの、大きいものが食べにくくなります。
高齢者向けの宅配弁当は食材の切り方や調理方法が工夫され、柔らかめに仕上げられているものが多いのが特徴です。
また、高齢の方の好みに合いやすい和風の味付けが中心になっています。
さらに、刻み食やムース食などが用意されていることが多く、個々の咀嚼・嚥下の状態に合わせて選ぶことができます。
栄養バランスに配慮している
高齢になった方も、栄養バランスが整った食事を食べることは、とても大切です。
例えば、たんぱく質が不足すると筋肉量が減少したり、骨を構成するコラーゲンが不足し、骨粗しょう症を引き起こしたりして、フレイル(※)状態に陥ることがあります。
たんぱく質以外にも、糖質や脂質、ビタミン、ミネラルなど、健康を維持するために必要な栄養素は若い世代とあまり変わりないのですが、高齢になるとどうしても食が細くなりることから、栄養不足に陥ることが多くなります。
高齢者向けの宅配弁当の中でも、管理栄養士が栄養バランスを考えてメニューを考えているものは、高齢者の栄養不足を予防する一助になります。
(※)フレイルとは フレイルは低栄養から筋力や気力が低下し、常に疲労感がぬぐえなくなっている状態です。
筋力が落ちているため、運動能力が低下して基礎代謝が落ち、さらに食欲が落ちてしまうほか、認知症を併発することもあります。
高齢者にも食べやすいメニュー
ここからは自炊ができるときにお試しいただきたい、高齢者にも食べやすいメニューや作り方のポイントをご紹介します。
やわらか豚のポークチャップ
部位によっては固くなりやすい豚肉ですが、高齢者にも食べやすい軟らかさに仕上がるレシピです。
【材料】2人分
豚ロース肉・ステーキ用 2枚
(下味用)
玉ねぎ・すりおろし 大さじ2
塩 小さじ1/2
こしょう 適宜
片栗粉 小さじ1/2
サラダオイル 大さじ1
玉ねぎ 1/4個
にんじん 1/4個
スナップエンドウ 4本程度
水 100cc
コンソメスープのもと 小さじ1/2程度
ケチャップ 大さじ1
塩・こしょう 適宜
【作り方】
①豚ロース肉・ステーキ用は脂肪と赤身の間のスジを包丁かキッチンばさみで数か所切ります。
②塩・こしょう、玉ねぎのすりおろしを①からめ、冷蔵庫に30分程度入れて味をなじませておきます。(この状態でファスナー付きの保存袋に入れ、冷凍しておくこともできます。)
③①の豚ロース肉・ステーキ用を1㎝幅に切ります。サイズは食べる方の状態に合わせて加減してください。 玉ねぎは繊維の向きに垂直になるように、薄切りにんじんは皮をむいて薄めの半月切りにし、下茹でします。スナップエンドウはスジを取り、さっと茹でて1/4程度に切っておきます。
④フライパンにサラダオイルを熱し、②の豚ロース肉に片栗粉をまぶして弱めの中火で焼きます。
⑤④に火が通ったら、③のにんじん、玉ねぎ、スナップエンドウ、水、コンソメスープのもとを加え、ざっと混ぜてから蓋をして蒸し煮にします。
⑥全体に火が通り、しんなりとしてくればケチャップを加え、塩・こしょうで味を調えます。
塩分やカロリーをコントロールする
高血圧の不安や血管系の疾患、また、肥満などが気になる場合は、塩分やカロリーの摂取を控える必要があります。
自炊する時に塩分やカロリーを抑えるための工夫として、以下のようなポイントがあります。
・レモンやゆず、酢など、酸味があるものを利用します。酸味が苦手な場合は、レモンやゆずの皮をすり下ろしたものを少量加え、香りをプラスします。
・三つ葉、木の芽、ネギ、大葉など、香味野菜を利用する。
・出汁をしっかりと取り、旨みを利用する。
このように、出汁の味や酸味、香りのものを加えることで味の幅が広がり、塩分やカロリーを控えることができます。
また、同じ食材を使った料理であっても、これらのポイントを使い分けることで、料理のレパートリーを増やすことができますよ。
また、腎臓病を患っている方はたんぱく質の摂取量を制限される場合がありますね。
これは、腎臓のろ過機能が低下してしまったために、たんぱく質から出る老廃物を処理しきれなくなってしまい、さらなる腎機能の低下や尿毒症を引き起こす可能性があるからです。
とはいえ、先ほどもご紹介したとおり、たんぱく質は私たちの生命を維持するためにとても大切な栄養素の一つです。
かかりつけの医師や栄養士の指導を受けつつ、適量を取ることが大切です。
鰆のホイル焼き
鰆や鯛、甘鯛など白身の魚、また、鶏ささみなどはホイルで包んで蒸し焼きにすると、しっとりと柔らかく仕上げることができます。
香味野菜や酸味のゆずを効かせて、減塩メニューに仕上げることができますよ。
【材料】2人分
鰆 2切れ
塩 1つまみ
玉ねぎ(1cmの輪切り)2切れ
しめじ 1/4パック
(えのきやエリンギなどお好みで)
三つ葉 1/2束
ゆず 1/2個
サラダオイル 適宜
【作り方】
①鰆は骨を抜き、洗って付着している血液などを取り除きます。
(背骨がついていると火通りが悪くなるので、3枚卸しのものを利用するとよいでしょう。)
塩ひとつまみを水大さじ1で溶き、全体にふりかけて冷蔵庫で30分程度、下味をつけます。
②しめじは石づきを取り除いてほぐし、三つ葉は5cm程度の長さに切ります。
ゆずは皮を直径1cm程度にそぎ取ったものを2枚用意します。残りはくし切りにして種を取り除いておきます。
③①のさわらの水分をふき取り、身が厚ければ十字に飾り包丁を入れます。
④アルミホイルにサラダオイルをごく薄く塗り、中央に玉ねぎ、鰆の順に乗せます。しめじ、三つ葉、そぎ取ったゆずの皮をのせます。
⑤アルミホイルの手前の辺と奥の辺を、中央上部で突合せて1cm幅で2回折りたたみます。
その後、右の辺、左の辺それぞれを1cm位ずつ2回折りたたみ、水分や蒸気が出ないようにして、トースターなら500W、魚焼きグリルの場合は弱めの中火で7分程度、全体に火が通るまで焼きます。
⑥アルミホイルの底が破れないように注意して取り出し、くし切りのゆずを添えます。
低たんぱくの食事が必要 な場合
高齢になり、食が細くなると、最も心配されるのが低栄養です。とはいえ、持病によりたんぱく質の摂取が制限されている方もいらっしゃいます。低栄養に気をつけながら、たんぱく質の摂取を制限するために最も取り組みやすいのが、たんぱく源となる肉や魚を野菜と併せて料理することで、いわゆる「かさ増し」を行うことです。
たんぱく質の摂取量は、自己流で調整するのではなく、必ずかかりつけ医の指示を仰いでくださいね。
レンコン入り鶏つくねの照り焼き
鶏ひき肉にレンコンを混ぜて、かさ増しを行います。薬膳では、レンコンには肺を潤し、咳やアレルギーを鎮める効果があるとされています。分量の半分をすりおろし、のこり半分を刻んで入れることで、食感にアクセントが生まれますよ。
【材料】2人分
・鶏ひき肉・・・150g
・れんこん・・・150g
・片栗粉・・・大さじ1
・酒・・・大さじ1
・しょうが・・・ひとかけ
・塩・・・ひとつまみ
・たれ
(酒、しょうゆ、みりん・・・各大さじ1)
・サラダオイル・・・・大さじ1
・ししとうなど・・・適宜
【作り方】
① れんこんは半分をすりおろし、残りの半分は細かく刻んでおきます。咀嚼・嚥下に不安がある場合は、刻んだレンコンはあらかじめ柔らかめに茹でておきます。
② 鶏ひき肉をボールに入れ、片栗粉、酒、しょうが、塩を加えてよく練り、ある程度まとまってきたところで、①のれんこんのすりおろしを加え、ムラが残らないようによく混ぜます。
③ フライパンにサラダオイルを熱し、①のつくねを適当な大きさにまとめて焼きます。
④ ししとうはガクの部分を切り取り、さっと炒めておきます。
⑤ ③のつくねに火が通ったらタレの材料を合わせて回しかけます。とろみが弱いようであれば、水溶き片栗粉(分量外)を加えて沸騰させ、とろみをつけます。
宅配弁当と自炊メニューまとめ
宅配弁当と自炊の食事、それぞれ、良いところがたくさんあります。
例えば通院や仕事などで食事の支度が難しいとき、気候や体調の加減で食材の買い物に行くことができないときにお弁当を活用してみてください。
一方、体調がよく、時間的にも余裕があるなどは料理を作り、家庭の味を楽しむなど、気負うことなく日々の食事が楽しめるとよいですね。