寝たきりになった人の介護の仕方は?洗髪・食事介助などの方法をすべて解説

高齢になり、体が思うようには動かなかったりすると、家に閉じこもりがちになったり、何に対しても意欲が出ないことがあります。自分の親にそういう傾向が見られた場合、なんらかのきっかけで寝たきりなってしまうことを心配をされる方もいらっしゃるでしょう。もし家族が寝たきりになった場合、どんなケアをすればよいのか解説します。
目次
寝たきりの高齢者の介護で、知っておきたいポイントは?
寝たきりの高齢の方は、自力で身体を動かすことが難しい状態です。そうすると床ずれが起こるため注意が必要です。そのほか、食事の世話や排泄のケアが必要になる場合もあります。
どんなケアが必要なのか、また、介護する側、される側の両方に負担にならない方法を考えましょう。
食事介助の方法
最も気をつけたいのは誤嚥です。誤嚥(ごえん)を防ぎ、楽しくおいしく食事を取ってもらうためのポイントを説明します。
食事前の準備
これから食事をすることを伝える
直前まで眠っていた状態の場合、しっかり目覚めないまま食事を始めてしまうと、誤嚥につながる場合があります。こんなメニューがあるよ、など注意を促し、食べる行為に意識を向けてもらいましょう。
h4: 先に排泄を済ませる
途中でトイレに行くと食事を中断することになります。すっきりした状態で食事をとることで食もすすみます。
正しい姿勢を取る
食べ物をスムーズに胃へ運び、誤嚥を防ぐためにも、できるかぎり上体を90度に近い状態に保つようにします。
部屋と身の回りをきれいにする
気が散るテレビなどは付けず、リラックスできる環境を整えます。また食事前に手の平や指の間も丁寧に拭き清潔にしましょう。衣服が汚れないよう、前掛けもつけましょう。
口の中をきれいにする
口の中が汚れていると、雑菌も一緒に飲み込んでしまいます。うがいや専用のスポンジなどで口腔ケアを行いましょう。
食事中の介助方法
声をかけながら、しっかり飲み込むのを確認する
食べるペースに合わせ、飲み込んだのを確認してから次のひと口を運びましょう。誤嚥を防ぐために飲み込みやすい食事の形状にすることも大切です、
スプーンの大きさや形を選ぶ
大きすぎたり深い物を使うと誤嚥につながります。また、口元から喉までうまく食べ物を送れない場合は、柄の長いものを使いましょう。
口に入れる量を調整する
食べ物を飲み込む力が弱っているので、1回で飲み込める分だけを口に入れるようにします。
こまめに水分補給する
唾液の分泌が少なくなっているお年寄りは、食前や食事中にも十分な水分をとり、口を湿らせておくことで食べ物を飲み込みやすくなります。
食後のケア
すぐに横にならない
食べた物や胃液が逆流し、むせたり、食道を傷めてしまったりする場合があります。食後1時間くらいは、頭部を高くし、かつリラックスできる姿勢で過ごしましょう。
口腔ケア
口の中をゆすいだり歯を磨いたりして、清潔に保ちましょう。入れ歯を使っている場合は、いったん外しましょう。
床ずれを防ぐ方法
寝たきり状態になると、自力で寝返りを打つことも難しくなるため、床ずれが起こりがちです。その予防や対処法について説明します。
床ずれとは
床ずれとは?
同じ姿勢を取り続けることで体の一部が圧迫され、血流が悪くなります。そうすると皮膚や筋肉に酸素や栄養が届かなくなり、その部分が壊死してしまうことがあります。これを「床ずれ」、医学用語では「褥瘡(じょくそう)」といいます。
なぜ床ずれなるのか?
寝たきりになると自力で身体を動かすことが難しくなり、長時間、同じ場所が圧迫され続けます。また、汗や尿などで皮膚がふやけたり汚れたりしているとできやすくなります。
床ずれができやすい場所
マットや布団にあたる場所、かかとや背中、腰など骨が出ている場所にできやすいです。しかし寝相によってはどこでもできる可能性があります。
床ずれの予防
長時間同じ姿勢で寝させない
仰向けから横向き、横向きから仰向けへと、体位変換しましょう。これはおむつ交換の際にも必要な動作です。
身体をいつも清潔にする
汗や尿、便などの排泄物がついたままになっていると、皮膚炎のもとになります。乾燥もかゆみや摩擦を起こすため、撥水性の高い軟こうや保湿クリームで予防しましょう。
床ずれができてしまったときのケア
洗浄と消毒
十分な量のお湯で洗い流しましょう。低刺激の弱酸性石けんをよく泡立て、傷の周囲の皮膚を優しく洗います。消毒剤を使うときには、体に残らないよう、ぬるま湯で洗い流しましょう。
マッサージはNG
血行を良くしようと、傷ができた部分をマッサージすると、かえって皮膚組織を損傷することになります。
初期段階での発見が重要
程度が浅ければ家庭でもケアできるかもしれません。しかし、状態によっては入院治療が必要な場合があります。床ずれを発見した際は、医師や看護師へ相談し、指示を仰ぎましょう。
洗髪・清拭の方法
全身入浴が頻繁にできない場合、衛生面で問題が出てきます。清潔さを保つためには、できる限り洗髪や清拭(せいしき)を行いましょう。
洗髪の方法
用意するもの
シャンプー、お湯、タオル、洗面器、枕、ビニールシート など
洗髪前の準備
・床が濡れないよう、後頭部の下に洗面器など水を受けられるものを置きます。
・首を安定させるため、ベッドとの間に枕などをはさんでおきましょう。
・お湯は38~40度くらい。長く置くと冷めるので、直前に準備しましょう。
洗髪の手順
1.洗面器にお湯を入れます。
2.首より下に頭がくるようにします。
3.髪をとかし、毛先から頭皮へ向かってお湯をかけます。
4.お湯がなじんでから、シャンプーで洗いましょう。
洗髪が終わったら、タオルで十分水気を取り、ドライヤーで乾かしましょう。
洗髪の注意点
部屋の温度が低いと洗髪後に風邪をひきやすくなります。十分に暖め(22~26度くらいがよいでしょう)てから洗髪を始めます。
すすぎの前にタオルで頭を包み、シャンプー液を拭きとるなどし、十分にすすぐようにしましょう。特に襟足や耳周りは、すすぎ残しがないように気をつけます。お湯を使う際には、耳に水が入らないよう、耳栓を使うのもおすすめです。
ドライヤーを使う際には、皮膚を傷つけないよう、20cmくらい離して風を当てましょう。
清拭とは
お湯を含んだタオルなどで、全身または体の一部分を拭くことです。体を温めると血行が良くなるので、筋肉のこわばりや床ずれの予防にも役立ちます。また、腸の収縮が促されるため、便秘予防も期待できます。
汚れや汗を拭くことで爽快感も得られますし、皮膚の状態を観察できるので異常の早期発見にもつながります。
清拭の方法
用意するもの
・タオル(バスタオルも含め、数枚)
・石けん
・熱めのお湯(55度くらい)
・洗面器
・バケツ
・ゴム手袋
清拭前の準備
・清拭ができる状態か、体調を確認しましょう。
・部屋を暖め(25度くらい)、すきま風が入らないかチェックします。
・温めたタオルが熱すぎないか、自分の体にあてて確認しておきましょう。
清拭の手順
上半身、下半身、陰部の順に行います。
1.顔
目頭から目じりに向かって拭き、そのあと額、鼻、頬の順に拭きます。耳の裏と首は特に念入りに拭きます。
2.腕
手首を軽く持ち、腕、手の順に拭きます。
3.胸・腹
胸・腹とも、円を描くように拭きます。
4.下肢
片足ずつ、ひざを曲げながら行います。かかと、くるぶし、太ももと、下から上へ拭いていきます。
5.背中・おしり
拭く前に体位を変えましょう。腰から背中へ向けて、おしりは円を描くように拭きましょう。
6.陰部
デリケートな部分なので、本人ができそうであればお願いするのもよいでしょう。
拭く順番は以下のとおりです。
男性:陰茎、陰のう、肛門
女性:恥骨から肛門に向けて一方向
清拭の注意点
清拭することを伝える
「これから、体を拭きます。」と声かけし、本人の了承を得ましょう。体調が悪いときには部分清拭にする、または清拭自体を控えます。
排泄の有無を確認する
清拭の前に、おむつが汚れていないか確認しましょう。
皮膚の状態を確認する(床ずれがないかなど)
かかと・おしりなどは床ずれが起きやすい部位なので、様子を確認しましょう。床ずれのある部位は、強く触らず、軽く拭くようにします。
室温・保温に気をつける
衣服を脱がせたら、上半身・下半身に分け、タオルケットやバスタオルで覆います。風邪をひかないよう、室温は25度くらいに設定しましょう。
排泄ケアの方法
排泄の失敗から自尊心が傷ついたり、生活の意欲が低下することもあります。デリケートな問題でもあるので、ケアには細心の注意を払いましょう。
排泄ケアとは?
排泄は、人が生きていくうえでは欠かせない、生理的欲求のひとつです。しかし、排泄物の処理は、介護する側にもされる側にもストレスを感じさせてしまいます。自分でできるうちは、サポートは必要最小限にとどめましょう。
排泄方法の種類と選び方
トイレ(トイレまで自分で行ける人)
高齢の方は足腰が弱いためしゃがむのが困難です。洋式のほうがよいでしょう。
ポータブルトイレ(自分で起き上がれる人)
トイレまで行くのは難しくても起き上がれるくらいであれば、室内にポータブルトイレを置き、自力での排泄を促します。
便器と尿器(介助があれば姿勢を変えられる人)
寝た状態で便や尿を取れる器具です。種類がいくつかあるので、本人の状態にあったものを選びましょう。
おむつ(意思疎通ができない人・尿意や便意がない人)
排泄が自力でうまくできなくなったとはいえ、自分からおむつをつけると希望する人はいません。便意や尿意が自分でわからなくなった場合など、最終的な手段と考えましょう。
排泄ケアの注意点
自力でできるようにサポート
歩いたり体を起こしたりすることは、筋力低下や認知機能低下の防止にも役立ちます。歩行や衣服の上げ下ろしなど、本人だけでは難しいところに手を貸すくらいでよいでしょう。
傷つけないように優しく対応する
排泄の失敗は自尊心を傷つけることにもなります。叱ったりせず、優しく対応しましょう。
排泄のタイミングを見極める
おおよそのタイミングがわかれば、排泄の失敗も予防できますし、スムーズにトイレへ誘導することもできます。
水分はこまめに摂取させる
排泄の回数を減らしたいために水分を取りたくないと思いがちですが、水分不足は脱水症状や便秘の引き金になります。本人にもよく説明し、十分に水分を取ってもらうようにしましょう。
介護者の負担を少しでも軽くするために
衣食住すべてのケアを、毎日行うのはかなりの重労働です。介護者の心身の疲れを取るにはどうすればよいでしょうか。
誰にでもある介護疲れ
精神的な介護疲れ
「自分の家族だから可能なかぎりサポートしたい」「他人に頼るのは気が引ける」「サービス利用は経済的に難しい」などの理由で、介護者が精神的に追い込まれることがあります。厚生労働省の調査(2005年)では、介護者の約4人のうち1人にうつ状態が見られました。
身体的な介護疲れ
掃除や洗濯といった身の回りの世話だけでなく、介護の場合は、体を支えたり起こしたりなど、物理的に体を使う機会も多いので、その疲労は日々蓄積されていきます。
介護疲れを軽減させる方法
市町村の窓口で介護サービスの申請を行い、要介護度の認定を受けられれば、公的な介護サービスが利用できます。要介護度、要支援度により受けられる種類は変わりますが、主な介護サービスは以下のとおりです。
・訪問介護
・訪問入浴介護
・デイサービス
・ショートステイ
・車椅子(レンタル)
・介護用ベッド(レンタル)
公的な介護サービス以外にも、便利な介護用品や介護食がたくさんあります。食事の支度は毎日のことなので、介護者の負担も大きいでしょう。最近では高齢の方に特化した配食サービスもあるので、利用するものよいでしょう。
介護の苦労をひとりで背負いこむ必要はありません。家族や友人、知人に相談する、SNSで介護仲間を作って情報交換をする、などで不安や物理的な負担が解消できることもあるでしょう。
まとめ
介護負担を軽くすることは、介護する側とされる側のよりよい関係を築くうえでも大切です。よい意味で、使えるものは使ってみましょう。
毎日の食事の支度は、介護の現場でなくとも大変な仕事です。配食サービスの利用も選択肢のひとつ。「まごころ弁当」では無料試食サービスもありますので、お試しになってみてはいかがでしょう。